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環境関連情報

難航する地球温暖化ガス削減交渉

COP17 (気候変動枠組み条約第17回締約国会議) 開催

情報発信日:2011-12-22

はじめに

COP17(1995年に国連により発効した気候変動枠組み条約締結国会議で、気候変動に対処するうえで進捗状況を評価するために毎年開催され、今回は第17回会議)、及び、CMP7(京都議定書による温室効果ガス削減条約締結国による第7回会議)が、2011年11月28日より12月9日までの予定で南アフリカのダーバンで開催されましたが、2日間の延長を行うという異例の会議となったにもかかわらず、今後の大筋の方向性についてのみが最終合意されただけで、具体的な目標や数字はほとんど盛り込まれないという残念な結果に終わりました。

これらの会議における最大の議題は、いうまでもなく2012年で終了する京都議定書以降の温室効果ガス削減にどのように取り組むかについてですが、各国・各地域の利害が激しくぶつかり合う中で交渉は難航しました。一方では、温室効果ガス排出量世界1位の中国と2位の米国が大量の温室効果ガスを排出しているにもかかわらず京都議定書には参加していませんが、今回の会議では両国ともに「2020年以降は新たな体制の中で削減義務を負う」という姿勢を示したことが、唯一の成果かと思えます。

2010年の世界の二酸化炭素排出量及び大気中の二酸化炭素濃度

2011年12月4日〜5日付けで、(独)国立環境研究所やNature Asia-Pacific, Nature Climate Changeなどが「世界金融危機からの回復にともない、2010年の世界の二酸化炭素排出量および大気中の二酸化炭素濃度が記録的水準に上昇」と題して、英国のGlobal Carbon Projectの報告に基づき世界一斉に以下のような発表を行いました。
(1) リーマンショックに端を発した世界的な金融危機によって、2008年から2009年において減少した世界の二酸化炭素排出量が、2010年には経済の回復による化石燃料の消費拡大、特に途上国の経済伸長によって、大気中の二酸化炭素の濃度が前年比で5.9 %増加して389ppm(0.0389 %)という記録的な高濃度水準に達した。
(2) 2010年において、世界の二酸化炭素排出量の増加に最も大きな影響をもたらした原因は中国、アメリカ、インド、ロシア及び欧州連合の排出量増加で、さらには新興経済地域も依然として増加傾向にあったことによる。
(3) 2010年における二酸化炭素濃度389ppmという、数字は少なくとも過去80万年の記録の中で最も高い水準であった。

温暖化回避には遠い計画 -さらなる努力が必要-

2011年12月5日付け朝日新聞夕刊4版1面では、国連環境計画(UNEP)がCOP17において「日本を含む86ヶ国が掲げる温室効果ガスの削減目標をにらみ、2020年までの削減量を予測した結果」が以下の通り報じられた。
(1) 各国において温暖化対策が取られず経済成長を続けると、2020年の温室効果ガス排出量は、二酸化炭素換算で現在の1.2倍の560億トンに達する。
(2) 世界の平均気温上昇を2℃以内に抑えようとする国際目標達成には、120億トンの削減が必要。
(3) 現状における世界各国の削減目標を積み上げても、最大で60億トンの削減にしか達しない。
(4) さらに、削減目標に対する対策が進まない場合には、削減量は10億トン前後に留まる可能性がある。
(5) 一方で、各国が目標値を引き上げ、発電・工業・交通・農業などの分野での取り組み強化により最大170億トンの削減が不可能ではない。そのためには、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの割合を9%(2005年の3.5倍)、原子力を含む非化石エネルギーの割合を28%(2005年の1.5倍)に高めることなどが必要。

図1 まだほとんど人の手が入っていない原生林(フィリピンのボホール島)


混迷するCOP17/CMP7の行方

COP17において、各国・各地域に温暖化ガスの削減義務を課した京都議定書が終了する2012年以降の温暖化防止のための法的枠組みをどうするかの交渉が行われましたが、金融危機を抱える欧州連合、原発事故により原子力エネルギーが使いにくくなった日本、経済成長を優先する中国や新興国、ドルの弱体化が止まらない米国など各国の抱える問題、利害や思惑がぶつかり合う中で、上述のように待ったなしの温室効果ガス削減へ向けた効果的な方向性は、残念ながら定まりませんでした。

議論は「現状の京都議定書の延長」または「新体制」の両論が議論されましたが、日本は温室効果ガス排出量が1位の中国と2位の米国が参加していない京都議定書の延長には、どんな条件下でも参加拒否を貫く姿勢を示し、会議延長にさえも参加しませんでした。欧州連合は米中も加えた新体制を2015年までに合意し、2020年から発足させる条件で京都議定書の5〜8年間延長に応じることにしました。しかし、京都議定書により削減義務を負っている地域・国の二酸化炭素の総排出量は世界全体の26%に過ぎません。さらに2013年以降は、日本の他にもロシアとカナダが京都議定書の延長から離脱することになるため、世界全体の排出量のわずか16% 程度しか削減対象にならないことになります。

京都議定書に参加していない中国は「2020年以降であれば削減義務を負う可能性」を示唆はしていますが、引き換えに「我々は途上国であり、削減義務より、先進国から資金と技術の支援を受けるのが先」(解振華・国家発展改革委員会副主任)と本音を漏らしたと伝えられています。

米国も「2020年以降に途上国にも義務を負わせる新体制」を主張するなど、今回は、ポスト京都議定書に対してやや柔軟な姿勢を見せてきています。

COP17では会期を2日も延長し、最終日の未明に何とか合意にこぎ着けたとはいえ、2013年から5〜8年間の京都議定書延長と引き換えに、2015年までに「全ての国が参加して削減義務を負う新体制」での枠組みを作り、2020年に発効することを目指すという、大枠だけしか決定できないという残念な結果に終わったといえます。

この結果、地球の平均気温上昇を2℃以内に抑えるためには今後の10年が極めて重要と気象学者や国連の専門家が言う中で、2013年から2019年までの7年間は義務を負わない自主目標だけで推移する危うい期間ということになります。

さらに、2020年以降中国と米国が参加したとしても、各国の削減目標について相当難航することが予想され、新しい体制での削減義務枠組み条約が発効するかどうかは、依然として見通しが立ったとは言いがたい状況にあります。

まとめ

(1) COP17およびCMP7が2011年11月28日より12月9日までの予定で南アフリカのダーバンで開催されましたが、各国の利害がぶつかり合い会議を2日間延長するという異例の状況にもかかわらず、京都議定書の効力が切れる2013年以降については大筋の方向性だけで、削減数値目標などの具体的な合意はできませんでした。

(2) 京都議定書以降は温室効果ガス1位の中国、2位の米国を含む全ての国に削減義務を課す新しい温室効果ガス削減条約を2015年までを目標に締結させ、2020年より実行に移すことで合意。これと引き換えにEUやノルウェーを中心に京都議定書を5〜8年延長する。ただし、中国と米国など大量排出国が参加しない不公平として日本、ロシア、カナダなどは京都議定書の延長には参加しない。

(3) 現状の京都議定書約定国の削減対象となる温室効果ガスは全世界の25% 程度ですが、日本、ロシア、カナダなどが離脱した場合には、さらに16% 程度と、効果は極めて少ない状況となる。

(4) 2020年以降、中国や米国が参加しても割り当て削減量については相当難航する可能性があり、合意に至るのはいばらの道と想定されます。

(5) 国連加盟国の数十ヶ国は、自主的な温室効果ガス削減目標は提示してはいますが「義務」は負わないため、京都議定書が失効する2013年から2019年までの7年間は空白期間になる危険性が高い。

(6) 気象学者や国連の専門官は地球の平均気温上昇を2℃以下に抑えるためには、今後の8年間位が重要としており、この空白期間が非常に危惧される。

2011年9月の「本コラム地球温暖化の実際と真の原因とは」にも書いたとおり、筆者個人としては二酸化炭素の排出量増加だけが地球の気候変動の原因とは思えない部分もありますが、現状の化石燃料や原子力の様な枯渇型エネルギーの野放図な消費を慎み、再生可能エネルギーへの転換を図るという点については賛同できるため、個人や企業などにおいて、今後どのような行動を取ればよいかについて、皆さんと一緒に考えて行きたいと思います。

引用・参考資料

注意

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