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環境関連情報

温室効果ガス排出削減、ポスト京都の行方

COP19へ向けての動き

情報発信日:2013-6-19

はじめに

地球温暖化防止を目的とした温室効果ガス排出量の削減に関して、京都議定書の約定期間である2012年が過ぎてしまいましたが、世界的な経済不況や各国のエゴなどがあって、なかなか次のステップに進めないのが現状です。

しかし、一方では世界的な異常気象発生件数の増加やアフリカや中国における急激な砂漠化の増進など、地球の気温上昇による気候変動の防止には一刻の猶予もない状況にあると言えます。

2011年12月22日付けの本コラムにおいてCOP17(気候変動枠組み条約第17回約定国会議)における温室効果ガス削減交渉が難航していることをお伝えしましたが、その後どうなっているのでしょう。特に温室効果ガス排出量が世界第1位と2位でありながら京都議定書から離脱した米国と中国の動向が注目されるところです。

 

COP16(気候変動枠組み条約第16回約定国会議)「カンクン合意」とは

上述の本コラムでは、COP17(気候変動枠組み条約第17回約定国会議)において、京都議定書以降の温室効果ガス削減交渉が不調に終わったことを述べましたが、それから遡り2010年11月29日から12月10日までメキシコのカンクンにおいて開催されたCOP16における「カンクン合意」をベースに今後の温室効果ガス削減を進めようという動きが加速しつつありますので、まずは「カンクン合意」について説明したいと思います。

温室効果ガス削減交渉がなかなか進まない背景は先進国と途上国の削減目標・削減行動を同じ枠組みの中にどのように収めるかという点にあります。途上国は「過去に大量の温室効果ガスを排出してきた先進国が途上国に同じ枠組みで削減を求めるのは不公平」という理屈です。

一方、日本、ロシア、カナダなどは「大排出量国の中国や米国などが参加しない削減には意味がない」とし、特に日本は京都議定書の約定期間が切れる2013年以降は削減目標を持たないと主張しました。

このような中で議長国メキシコの裁定によって「気温上昇を工業化前2℃以内に抑えるために、2050 年までの世界規模の大幅排出削減及び早期のピークアウト(上昇傾向にあるものが頂点を迎え減少傾向に向かうこと)を共有のビジョンとする前提のもとで一連の合意」がなされました。環境省によると「先進国・途上国両方の削減目標・行動が同じ枠組みの中に位置づけられ、我が国の目指す『全ての主要国が参加する公平かつ実効性ある枠組み』の基盤となるもの」と評価しています。

具体的には次の表のとおりです(出所:環境省)。

コペンハーゲン合意によって、各国から提出された削減目標を積み重ねても、科学的な根拠からすると地球の気温上昇を工業化以前の2℃以内抑えるには程遠い結果となりましたが、カンクン合意では目標が足りないこと自体が認識され、最新の科学にそって見直して行く過程も確立されました。

 

COP18(第18回気候変動枠組み条約約定国会議)

京都議定書の約定期間が切れる寸前の2012年11月26日から12月8日まで、カタール・ドーハにおいて、COP18(第18回気候変動枠組み条約約定国会議)及び京都議定書第8回締約国会合(CMP8)などが開催されました。

本会議の成果としては、事務レベル交渉として以下の事前会議が開催されたのち、閣僚級会議で合意を得ました。

(1) ADP(強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会)
(2) AWG-KP(京都議定書の下での附属書I国のさらなる約束に関する特別作業部会)
(3) AWG-LCA(条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会)
(4)その他二つの補助機関

一連のCOP及びCMPの決定が「ドーハ気候ゲートウエィ」として採択され、AWG-KPとAWG-LCAは作業を完了し、次回以降の交渉は新たな国際枠組みの構築に向けてADPに一本化されました。

その他、2020年に向けた長期資金に関する作業計画の一年延長、2013年~2015年の先進国による資金拠出努力、気候変動の影響に脆弱な国における被害軽減に取り組むための世界的なメカニズムなどの制度設計を実施するなどが決定されました。

 

今後(COP19に向けた)の2013年の交渉スケジュール

2月頃: MEF15(エネルギーと気候に関する主要国経済フォーラム)開催:米国・ワシントン
4月29日~5月3日: ADP会合(ドイツ・ボン)
6月3日~14日: SB/ADP会合(ドイツ・ボン)
9月9日~13日: ADP会合(ドイツ・ボン)
秋頃: プレCOP19
11月11日~22日: COP19(ポーランド・ワルシャワ)

 

まとめ

先進各国に温室効果ガスの削減義務を課した京都議定書の約定期間が、2012年を持って期限が切れ、第二約定期間に関する交渉が行われましたが、「中国と米国という世界第1位と第2位の排出国が参加しない京都議定書の単純延長は意味がない」とする日本などの反対により、一旦は決裂の危機に陥った温室効果ガス削減交渉ですが、COP16におけるカンクン合意(先進国は温室効果ガスの2020年までの削減目標を、途上国は削減のための行動を自らが定めて提出し、実施状況を2年に一度報告して各国の評価を受ける。罰則はない)に基づき、京都議定書には参加しなかった米国や中国を含めた全ての国が地球温暖化に取り組むための交渉が4月29日からドイツのボンで始まったADP(強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会)によって本格的にスタートしました。

まだ、各国がどの程度の削減目標を提示してくるかは腹の探り合いの状況ですが、現状では各国の削減目標を合算しても、地球の気温上昇を工業化前の2℃以下に抑えるという大前提に対しては半分にも満たないと計算され、自主目標と言えますが、大量排出国に対しては京都議定書並の厳しい目標が求められる可能性もあり、中国や米国は警戒感を強めているようです。

上記の各国削減目標は必ずしも現時点の目標とは限りません、あくまでも過去において各国政府が正式に表明した数字です。

ポスト京都議定書に対して、温室効果ガスの削減に向けて先進国も途上国も全ての国が交渉のテーブルに着いたという意味では、5月2日からドイツのボンで開催されたCOP19に向けてのADP作業部会開催は大きな意味を持ちますが、各国が満足する合意までには相当長い道のりが必要と思えます。

しかし、各国の空は国境に関係なくつながっており、今でも相当量の温室効果ガスが排出されていますので一刻も早い合意に至ることを祈り、見守りたいと思います。

引用・参考資料

注意

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