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環境関連情報

REACH規則は金属や無機原料も対象

化学産業だけの問題ではない

情報発信日:2008-10-30

REACH規則は化学産業だけの問題ではありません

欧州の総合的な化学物質規制である「REACH規則」に対する予備登録が2008年6月1日に開始され、11月30日までの間、欧州化学品庁(European Chemicals Agency:ECHA)にて受け付けが行われます。

当初、われわれが多く利用する材料である金属や無機材料は、REACH規則とは無関係と認識していた企業や工業会も多かったようですが、予備登録が始まったここにきて、鉄鋼連盟などを中心に無機材料や金属関連の工業会も真剣にREACH規則の対応について協議を行い、ガイダンスなどの公表を行っています。

REACH規則は、黄銅や青銅などの銅合金やSUS304やSUS316といったステンレス鋼も対象となります。

REACH規則の解読

そもそも、REACH規則は本文だけでも約1,000ページにも及ぶ法律であり(RoHS指令は数ページ)、これを解説するガイダンス(今なお順次発行されています)を含めると数千ページにも及ぶうえ、英語での難解な文章であり、これを完全に解釈するのはかなりの困難を極めます。

このため、日本ではREACH規則に関しては外務省、経済産業省、環境省など国の機関だけでなく、多くの公的機関や民間機関などが、その解釈について不明な点はEUの関係部局に種々問合せを行いながら進めているのが現状です。

現状で明確なこと・・・場合によりバルブや継手も予備登録が必要

(1) REACH規則の原則

REACH規則は、RoHS指令が「指定物質の原則禁止」といったハザード管理であるのに対して、「毒も節度をもって使えば薬になる」「人間の口に入る可能性が極めて高い場合とほとんど人間に接触する機会さえもない場合を同じ管理ではできない」といったリスク管理思想に基づいており、ある意味異質の規制といえます。

また、REACH規則は基本的には、「鉄」や「銅」など単一物質(Substance)や、これらを混ぜ合わせた合金の様に2種類以上の原料を混合させた調剤(Preparation)など、川上を対象にした規制ですが、物質や調剤を加工したバルブや継手などの成形品(article)においても、以下の条件に該当する場合には規制の対象となります(サプライチェーンにおける情報の伝達はRoHS指令と同じ考え)。

意図的な放出物質が有る場合

意図的放出とは、スプレー式殺虫剤の殺虫剤、ライターのガス、インクジェットプリンタのインクのように、その製品が機能を果たすために放出される場合で、バルブの防錆油のように次第に気化したり流体に混合して流出するような場合はグレーゾーンになりますが、目的は「成形品の表面に留まっていて効果を発揮するもの」であるため、意図的放出物質とはいえないと解釈されます。

高懸念物質を0.1重量%以上含む場合

最終的には3,000種類ほどが指定されるといわれていますが、現在16種類(以下の表を参照)の高懸念物質のリストが公表されています。たとえば、この高懸念物質が塗料のなかに含まれており、全体の0.1%以上の重量を有していれば規制の対象になります。

今後の課題

現状でのバルブ産業への影響はほとんどない?

現状においてバルブや継手などの配管部材はいずれも、REACH規則では成形品(article)と定義されます。意図的な放出という観点からは、消火器やガスボンベなどは対象となります。また、高懸念性物質リストに含まれる物質を全体重量として0.1%以上含む場合は対象となります。

ただし、よく用いられる例として「高懸念物質を0.1%以上含むボタン」も「Yシャツに付けた場合は0.1%以下となれば対象外」があります。この点はRoHS指令と異なる点です。

以上のことから、予備登録が終了する2008年11月30日までに高懸念物質のリストに載る物質がどこまで増えるかわかりませんが、バルブや継手など配管機材は例外を除き予備登録の必要はないと考えられます。詳しくは環境省の和訳による参考文献、EU "Guidance on requirements for substances in articles"「成形品に含まれる物質に関する要求事項についてのガイダンス」(PDF 1.15MB)を熟読して判断するか、同じく参考文献に示した、産業環境管理協会のREACH登録支援センターに相談されるとよいかと思います。

今後の問題

今後心配される問題としては、最終的に3,000種類にも及ぶのではといわれる高懸念物質のリストにどんな物質が追加されてくるかによりますが、現在RoHS指令で制限物質になっている鉛、カドミウム、六価クロム、水銀などの金属材料がどのように扱われるかにあります。

もし今後、これらの金属物質がリスト化された場合には、かなりの部分において影響がでてくる可能性が高まります。

REACH規則では「No data, no market」といいます。

いずれにしても、自社の製品を構成する材料にはどの物質がどのくらい使われていて、それがどの程度の毒性をもっているか、常に関心をもっていることが重要と思われます。

高懸念物質候補リスト(2008年8月末現在)16物質

今後は上記の高懸念物質に種々物質が追加されてゆくと考えられますので、継続してウオッチングする必要があると思います。なお、RoHS指令においても現在制限物質は6物質ですが、欧州からの未確認情報によれば、本年度末頃には12〜15物質程度に追加され、最終的には50種類程度まで増加するとの観測が出ているそうです。新シップリサイクル法においてもインベントリの提出が義務づけられることに決まると思われます。いずれにしても、各企業においても品質管理と同様に化学物質管理の仕組みをつくることが急務になってきていると思われます。上記16物質のおもな使用例(どんな物質に含まれている可能性があるか)は順次お知らせしたいと思います。

参考文献及び引用先

注意

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