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REACH規則における高懸念物質(SVHC) #8

第12次SVHC 7物質が追加、合計161物質に

情報発信日:2015-1-19

はじめに

ECHA(欧州化学品庁)は2014年12月17日付けでホームページにおいて、「REACH規則における高懸念物質(SVHC)が収載されているCandidate List of Substances of Very High Concern for Authorisation (高懸念物質の認可対象候補物質リスト)」を更新しました。従来155物質だったSVHCに、候補として公開していた10物質のうち6物質を新規に追加し、既存登録1物質の情報を更新しました。

これによって、高懸念物質の認可対象候補物質リストに収載されたSVHCは161種類となりました。

 

第12次追加高懸念物質一覧

 

表1 附属書XIV(Candidate List)に第12次追加収載されたSVHC物質(2014年12月17日付け)

1

物質の英語名 2-benzotriazol-2-yl-4,6-di-tert-butylphenol (UV-320)
物質の和名、略称、
俗称、別名等
2-ベンゾトリアゾール-2-イル-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール(UV-320)
CAS番号 3846-71-7
収載理由 PBT(第57条d)、vPvB(第57条e)
主な用途など プラスチック用紫外線吸収剤
・プラスチック樹脂成型品 ・特殊合板(化粧板) ・ワックス、シーリング剤 ・塗料、 接着剤、インキ ・補修材、芳香剤 ・コーティング剤、防水施行用樹脂、UV加工溶剤など

2

物質の英語名 2-ethylhexyl 10-ethyl-4,4-dioctyl-7-oxo-8-oxa-3,5-dithia-4-stannatetradecanoate
(DOTE)
物質の和名、略称、
俗称、別名等
10-エチル-4,4-ジオクチル-7-オキソ-8-オキサ-3,5-ジチア-4-スタンナテトラデカン酸2-エチルヘキシ 略称:DOTE
CAS番号 15571-58-1
収載理由 生殖毒性(第57条C)
主な用途など PVC(ポリ塩化ビニル用熱安定剤)

3

物質の英語名 reaction mass of 2-ethylhexyl 10-ethyl-4,4-dioctyl-7-oxo-8-oxa-3,5-dithia-4- stannatetradecanoate and 2-ethylhexyl 10-ethyl-4-[[2-[(2-ethylhexyl)oxy]- 2-oxoethyl]thio]-4-octyl-7-oxo-8-oxa-3,5-dithia-4-stannatetradecanoate (reaction mass of DOTE and MOTE)
物質の和名、略称、
俗称、別名等
10-エチル-4,4-ジオクチル-7-オキソ-8-オキサ-3,5-ジチア-4-スタンナテトラデカン酸2-エチルヘキシルと10-エチル-4-[[2-[(2-(エチルヘキシル)オキシ]-2-オキソエチル]チオ]-4-オクチル-7-オキソ-8-オキサ-3,5-ジチア-4-スタンナテトラデカン酸2-エチルヘキシルの反応生成物(DOTEとMOTEの反応生成物)
CAS番号 なし
収載理由 生殖毒性(第57条C)
主な用途など PVC(ポリ塩化ビニル用熱安定剤)

4

物質の英語名 2-(2H-benzotriazol-2-yl)-4,6-ditertpentylphenol (UV-328)
物質の和名、略称、
俗称、別名
2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(UV-328)
CAS番号 25973-55-1
収載理由 PBT(注1)(第57条d)、vPvB(注2)(第57条e)
主な用途など プラスチック用紫外線吸収剤
・プラスチック樹脂成型品 ・特殊合板(化粧板) ・ワックス、シーリング剤
・塗料、接着剤、インキ ・補修材、芳香剤 ・コーティング剤、防水施行用樹脂、
UV加工溶剤など

5

物質の英語名 Cadmium fluoride
物質の和名、略称、
俗称、別名
フッ化カドミウム、カドミウムジフルオリド
CAS番号 7790-79-6
収載理由 発癌性(第57条a)、変異原性(第57条b)、生殖毒性(第57条c)、環境に重大な影響を及ぼすと懸念されると同等のレベル(第57条f)
主な用途など 高速大容量通信機器の絶縁体、合金の製造、有機合成用

6

物質の英語名 Cadmium sulphate
物質の和名、略称、
俗称、別名
硫酸カドミウム(Ⅱ)、硫酸カドミウム(Ⅱ)無水物・水和物
CAS番号 10124-36-4; 31119-53-6
収載理由 発癌性(第57条a)、変異原性(第57条b)、生殖毒性(第57条c)、環境に重大な影響を及ぼすと懸念されると同等のレベル(第57条f)
主な用途など プリント基板のカドミウムメッキ用、殺菌剤、防かび剤、セメント固化促進剤

(注1)PBT 物質(難分解性で高蓄積性および毒性を有する物質)
(注2)vPvB 物質(極めて難分解性、高い生体蓄積性を有する物質、およびそれらと同等の懸念のある物質)

 

表2 今回収載情報が更新された物質

1

物質の英語名 Bis(2-ethylhexyl) phthalate (DEHP)
物質の和名、略称、
俗称、別名
フタル酸ビス(2-エチルヘキシル) 略称:DEHP
CAS番号 117-81-7
収載理由 生殖毒性(第57条C)、環境に重大な影響を及ぼすと懸念されると同等のレベル(第57条f)
主な用途など PVC(ポリ塩化ビニル)用可塑剤 ※かつては使い捨て医療器具に汎用されていた。
油圧油、・コンデンサ用誘電体、サイリュームの溶媒

(注) 今回更新された内容は、収載理由(第57条f)の追加

 

表3 今回は収載または情報更新を見送られた物質

1

物質の英語名 Benzyl butyl phthalate
物質の和名、略称、
俗称、別名等
フタル酸-n-ブチル=ベンジル (BBP)
CAS番号 85-68-7
収載理由  
主な用途など 塩化ビニル及びニトロセルロース樹脂の可塑剤

2

物質の英語名 Dibutyl phthalate
物質の和名、略称、
俗称、別名等
フタル酸ジブチル(DBP)
CAS番号 84-74-2
収載理由  
主な用途など 塩化ビニル、酢酸ビニル、ニトロセルロース、メタクリル酸等の樹脂の可塑剤

3

物質の英語名 Diisobutyl phthalate
物質の和名、略称、
俗称、別名等
フタル酸ジイソブチル(DIBP)
CAS番号 84-69-5
収載理由  
主な用途など 汎用可塑剤、・セルロイド、ネイルポリッシュ、爆発物、塗料製造等

 

フタル酸エステル類について

フタル酸エステル類は、古くから塩化ビニルなどのプラスチック用の可塑剤として広く利用されてきましたが、近年ヒトへの有害性の懸念から様々な規制を受けるようになってきています。 今回もSVHC候補として4種類の物質が挙げられ、1種類(フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)が収載、3種類は収載が見送られましたが、次回以降に収載される可能性もありますので、フタル酸エステル類の規制について、まとめておきます。

フタル酸は化学式C8H6O4のベンゼン環にカルボキシル基がO(オルト)の位置に2つ付いた化合物で「ベンゼンジカルボン酸」と呼ばれます。異性体としてm(メタ)の位置にカルボキシル基が付いたものをイソフタル酸、p(パラ)位をテレフタル酸と呼びます。 このフタル酸と各種アルコールが反応して生成されるエステル類は、古くよりプラスチック類に混ぜて柔らかくする為の汎用可塑剤として広く利用されて来ました。

表4 フタル酸エステル類の名称と用途(可塑剤工業会など)

名称

略号

CAS登録番号

用途・備考

フタル酸ジ-2-エチルヘキシル
フタル酸ビス(2ーエチルヘキシル)
DEHP
DOP
117-81-7 汎用可塑剤(生産中)
フタル酸ジイソノニル DINP 28553-12-0
68515-48-0
汎用可塑剤 (生産中)
フタル酸ジブチル DBP 84-74-2 汎用可塑剤 (生産中)
フタル酸ジイソデシル DIDP 26761-40-0 耐熱電線、レザー (生産中)
フタル酸ブチルベンジル
フタル酸ブチルベンジル
BBP
BBzP
85-68-7 接着剤、シーリング剤
フタル酸ジノルマルオクチル DNOP 117-84-0 電線、フィルム

 

表5 欧米日のフタル酸エステル類規制について(ボーケン/塩ビ工業・環境協会)

 

DEHP(別名DOP)・DBP・BBP

DINP・DIDP・DNOP

EU おもちゃ指令
2005/84/EC
・おもちゃ・育児用品に使用禁止
・おもちゃは14歳未満が対象
・規格値0.1%
・子供により口に入れる可能性がある(1辺でも5cm未満のあるもの)おしゃぶり
・育児用品に使用禁止
・規格値0.1%
アメリカ
CPSC Improvement Act
・おもちゃ・育児用品に使用禁止
・おもちゃは12歳以下、育児用品は3歳以下の子供を意図した製品
・規格値0.1%
・子供の口に含まれる可能性がある(1辺でも5cm未満のもの)おしゃぶり
・育児用品に使用禁止
・おもちゃは12歳以下、育児用品は3歳以下 の子供を意図した製品
・規格値0.1%
日本
平成14年厚生労働省告示第267号
(2002)
・DEHPについて、おもちゃ及び油脂又は油性食品*2を含む食品に接触する器具又は容器包装に使用禁止
・おもちゃは6歳未満が対象
・規格値0.1%、器具又は容器包装の溶出試験規格値1ppm
・DBP・BBPは規制なし
・DINPについて、口にすることを本質とするおもちゃに使用禁止
・6歳未満が対象
・規格値0.1%
・DIDP・DNOPは規制なし

 

表6 REACH規則でSVHCリストに収載されているフタル酸エステル類

英語名 Butyl Phthalate
和名、略称、俗称、別名等 フタル酸ジブチル(DBP)
CAS番号 84-74-2
収載理由 生殖毒性
備考 2008/10
英語名 Bis(2-ethylhexyl) phthalate
和名、略称、俗称、別名等 フタル酸ビス2(エチルヘキシル)(DEHP)
CAS番号 117-81-7
収載理由 生殖毒性
(今回追加理由) 環境に重大な影響を及ぼすと懸念されると同等のレベル
備考 2008/10
英語名 Benzyl butyl phthalate
和名、略称、俗称、別名等 フタル酸ブチルベンジル(BBP)
CAS番号 85068-7
収載理由 生殖毒性
備考 2008/10
英語名 Diisobutyl phthalate
和名、略称、俗称、別名等 フタル酸ジイソブチル(DIBP)
CAS番号 84-69-5
収載理由 生殖毒性
備考 2010/1
英語名 Bis(2-methoxyethyl) phthalate
和名、略称、俗称、別名等 フタル酸ビス(2-メトキシエチル)
CAS番号 117-82-8
収載理由 生殖毒性
備考 2011/12/9
英語名 Diisopentyl phthalate
和名、略称、俗称、別名等 フタル酸イソペンチルまたはフタル酸ジイソアミル
CAS番号 605-50-5
収載理由 生殖毒性
備考 2012/12/19
英語名 1,2-Benzenedicarboxylic acid, dipentylester, branched and linear
和名、略称、俗称、別名等 1,2-ベンゼンカルボン酸、ジペンチルエステル、または「フタルさジペンチル」の分岐及び直鎖
CAS番号 84777-06-0
収載理由 生殖毒性
備考 2012/12/19
英語名 N-pentyl-isipentyl phthalate
和名、略称、俗称、別名等 フタル酸n-ペンチル-イソペンチルまたは「n-ペンチル-イソペンチルフタレート」
CAS番号 776297-69-9
収載理由 生殖毒性
備考 2012/12/19
英語名 Dipentyl phthalate
和名、略称、俗称、別名等 フタル酸ジペンチル(DPP)
CAS番号 131-18-0
収載理由 生殖毒性
備考 2013/6/20
英語名 Dihexyl phthalate
和名、略称、俗称、別名等 フタル酸ジヘキシルまたは「フタル酸- n -ジヘキシル」(DHP)
CAS番号 84-75-3
収載理由 発癌性
備考 2013/12/16

※これらフタル酸エステル類は、REACH規則のSVHCリストに1度収載された後に、新たな毒性が認められた場合には収載理由が都度追加されています。

 

まとめ

今回は新たに6物質が「Candidate List of Substances of Very High Concern for Authorisation (高懸念物質の認可対象候補物質リスト)」に収載され、既存登録の1物質の情報が更新されました。

今回、収載または情報が更新されなかった3物質(フタル酸-n-ブチル=ベンジル (BBP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジイソブチル(DIBP))はともに、既に収載されている物質ですが、収載理由などの登録情報の追加が行われなかったようです。

引用・参考資料

注意

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