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欧州化学品関連の規則「CLP規則」について

「物質および混合物の分類・表示・包装」に関する欧州規則 (EC) No 1272/2008

情報発信日:2016-11-25

はじめに

ECAH(欧州化学品庁)は2016年9月27日付けで「REACH規則とCLP規則下にある『物質の同定と命名に関するガイダンス』の草案を更新し、これを検討するための会議体であるMSC(加盟国専門委員会)とRAC(リスクアセスメント専門委員会)に送付した」と発表しました。

欧州の化学品規制関連の代表格とも言えるREACH規則としばしば並んで語られるCLP規則は2009年1月20日に発効しましたが、日本ではあまりに話題になっていません。

RoHS指令などの「指令」は加盟国に対して国内法を整備するよう求めるものであり、加盟各国が国内法を整備しない限りは効力を発揮しませんが、REACH規則の「規則」とは、EUにおいて発効すると各国の国内法と同様の効力を発揮するものであり、「指令」より挌が上の法律と言えますが、なぜ日本においては「CLP規則」があまり話題にならないのでしょうか。

本コラムで今回取り上げるCLP規則も「規則」ですので、2009年1月に発効した時点で国内法と同じ効力を発揮するものですが、当該CLP規則には旧法の「化学物質に関する危険物質指令 [DSD指令](No. 67/548/EEC)及び化学物質を用いた「調剤」または「混合物」に関する危険調剤指令 [DPD指令](No. 99/45/ECを合体して指令から規則に格上げしたため、旧法からの移行期間が定められています。

この移行期間の最大が2017年5月31日に期限を迎えるのを機に、CLP規則とは何かを解説したいと思います。

CLP規則とは、なぜREACH規則と並べて語られるのか

CLP規則は(Regulation on Classification, Labelling and Packaging of substances and mixtures)の頭文字を取った略称で、日本では「物質および混合物の分類・表示・包装」に関する欧州規則(EC)No 1272/2008と呼ばれます。

このCLP規則は主にハザードコミュニケーション(危険情報伝達)を目的とする国連の「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」(GHS)と整合性を有し、かつEU独自の規制も加味した「化学品の分類、表示、包装に関する規則」で、その目的は「高いレベルでの人の健康と環境の保護を確実なものとするとともに、物質と混合物そしてある種の物品(アーティクル、成形品)の自由な物流を確実なものとすること」とされています。

さて、ではなぜREACH規則とCLP規則は並べて語られるのでしょう。それは、REACH規則における化学物質の分類、表示、包装については、従来あった、「化学物質に関する危険物質指令 [DSD指令](No.67/548/EEC)」ならびに「化学物質を用いた『調剤』または『混合物』に関する危険調剤指令 [DPD]指令(No.99/45/EC)に依存して来ましたが、本コラムで述べるCLP規則の施行により、段階的にGHSと整合性を有する化学物質の分類・表示・包装のルールへ移行させるものと言えます。

CLP規則のポイント

(1)主な義務は、「分類、表示、包装および届出」にあります。
(2)物質または混合物のEU域内の製造者および輸入者が対象となります。但し、EU域内のサプライチェーンから協力を要請された場合にはEU域外でも実質的な対応が必要となる可能性があります。
(3)分類のルールは基本的にはGHSと同じですが、一部の危険有害性の区分がGHSとは異なります。
(4)従来法(上記DSD指令及びDPD指令)からの移行期間があり、この間は旧法と新法が併存しますので、従来法と新規則のCLP規則のどちらが適用になるか注意する必要があります。

図1 旧法(DSD及びDPD指令)から新法(CLP規則)への移行期間
(出典: CS Regulatory Ltd、旧法(DSD及びDPD指令)から新法(CLP規則)への移行期間)


(5)上記移行期間に合わせて、CLP規則の適用による分類の変更に応じて、SDSの訂正(主にセクショ ン2の危険有害性情報)が必要になります。
(6)1トン/年以下の製品も対象となります。

図2 CLP規則の概要 (出典:経済産業省)

旧法(DSD指令:67/548/EEC及びDPD指令:1999/45/EC)と新法(CLP規則)の主な変更点

※本項は経済産業省資料より抜粋

旧法 新法
(1)GHSに合わせたラベル表示システムへの変更
・絵表示をGHSに合わせて変更
絵表示 絵表示
・用語の変更
Risk Phrase(リスク警句) Hazard statement(危険有害性情報)
Safety Phrase(安全警句) Precautionary statement(注意書き)
(2)分類カテゴリーの追加、分類基準の変更
  ・「高圧ガス」「自己発熱性物質」「金属腐食性」等追加
  ・分類判定基準がGHSに合わせて変更
(3)用語の修整
調剤(preparation) 混合物(mixture)
危険(dangerous) 危険有害性(hazardous)
Indication of
danger
Explosive
Extremely/Very flammable
Oxidisig
Very Toxic/toxic
Corrosive
Harmful/irratating
Dangerous for the environment
Signal word Danger/Warning
Hazard statement Harmful in contact with skin,
Causes skin irritation, Very toxcic to aquatic life

CLP規則における義務

1. 分類の義務

・EU域内の製造者または輸入者は、EU域内で上市する物質または混合物を上市前に分類しなければなりません。

・また、その物質としてはEU域内に上市されない物質(サイト内単離中間体、輸送を伴う中間体、PPORD<研究開発用途等>の目的で製造または輸入された物質、年間あたり1トンを超えて成形品から意図的放出される物質および成形品中に年間1トンを越えて存在し、0.1重量%を超える濃度で存在する物質、および年間1トンを超えて成形品から意図的放出されるおそれのある物質で、当局が登録提出の要求したもの)も分類の対象となります。

・CLP規則には移行期間があり、物質と混合物では対応期限が異なりますので、注意が必要です。

2. 表示の義務

・EU域内の製造者または輸入者は、EU域内で上市する前に、危険有害性があると分類される物質または混合物について、危険有害性等の表示をしなければなりません。

・危険有害性の表示方法は概ねGHSと類似していますが、CLP規則独自のものとして、補足的表示の義務もあります。

・CLP規則には移行期間があり、物質と混合物では対応期限が異なっています。

・表示には、上市されるEU加盟国の公用語を含んでいなければなりません。

・CLP規則には移行期間があり、物質と混合物では対応期限が異なりますので、注意が必要です。

3. 包装の義務

・物質または混合物の供給者は、以下のように包装されていることを確実にしなければなりません。

(1)危険有害性のある物質または混合物を入れる包装材は、内容物が漏出しないような設計・材料であること。

(2)所定の危険有害性がある物質および混合物を一般公衆に供給する場合、包装材に子供には開けられない留め具および/または警告を備えなければならないこと。

4. 届け出の義務

・EU域内の製造者または輸入者は、以下について届出をしなければなりません。

(1)REACH規則で登録の対象となる物質(年間あたり1トン以上となる物質)

(2)EU域内に上市される混合物に含まれる物質で、CLP規則またはDPD指令:1999/45/ECで規定される濃度限界値を超えて混合物中に存在する物質。この場合には年間1トンに満たないときでも届出が必要です。

・届出の期限は、2010年12月1日以降に上市される物質については、上市されてから1ヶ月以内です。

まとめ

(1)CLP規則は(Regulation on Classification, Labelling and Packaging of substances and mixtures)の頭文字を取った略称で日本では「物質および混合物の分類・表示・包装」に関する欧州規則 (EC) No 1272/2008と呼ばれます。

(2)REACH規則における化学物質の分類、表示、包装については、従来あった、「化学物質に関する危険物質指令 [DSD指令](No. 67/548/EEC)」ならびに「化学物質を用いた『調剤』または『混合物』に関する危険調剤指令 [DPD]指令(No. 99/45/EC)に依存して来ましたが、国連が進める化学物質に関するハザードコミュニケーション(危険情報伝達)を目的とした「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」(GHS)と整合性を持たせ、かつEUの独自性も加味した「規則」として2つの指令を統合して「CLP規則」を設けました。

(3)CLP規則は2009年1月に発効し、「規則」であるため、本来であればEU加盟各国に直ちに国内法と同等の効力を発揮しますが、CLP規則については移行期間が設けられ、段階的にGHSとの整合性を有するシステムに変更が行われています。

(4)本コラムでは、折に触れて「化学物質の分類や名称」がいかに多くあり、専門家でも同一物質を異なる物質と認識してしまう場合があったり、危険物と知らずに取り扱う事があったりするなどの事例などを述べて来ていますが、これらは有害化学物質を管理する上で大きな問題となっており、国連が中心となり、化学物質(単一物質及び混合物)の分類や表示法などを統一する方向で進んでおり、各国もこれに整合性を持たせる動きを取って来ていますが、EUにおけるCLP規則の施行もこの動きと連動したものと言えます。

引用・参考資料

注意

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