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環境関連情報

燃料電池がわが家にやってくる日#2

燃料電池開発最前線

情報発信日:2007-07-25

燃料電池の開発目的

地球温暖化防止とエネルギー資源の有効利用という2つの目的をもち、夢のエネルギーとして期待される「燃料電池」の開発に世界各国が力を入れています。

燃料電池の原理は、水素を原料とし空中の酸素と反応させることにより生じるエネルギーを電気として取り出すもので発電効率が高く、廃熱を利用することにより、さらに省エネルギーを図れるなどの利点をもちますが、「原料となる水素をどこから得るのか?」という点においては、現状では天然ガスや灯油、ガソリンなどに頼っているため、太陽光や風力、波力といった再生可能エネルギーとは異なりますが、現状の化石燃料を直接燃焼させる方法に比較すれば、効率のよいエネルギー資源の使い方だと思われます。

燃料電池の種類

一口に「燃料電池」といっても、「自動車用」「家庭用」「高層ビルや地域向け中型固定分散電源用」「発電所用」など用途により種々の方式があります。

そのなかでも、作動温度が100℃以下と低温なために自動車用や一般家庭用として最も実用化が近いといわれる固体高分子型(PEFC)があり、有望視されています。

燃料電池の種類

燃料電池の種類

燃料電池開発における課題

それではいつ頃、燃料電池がわが家にもやってくるのでしょうか?

現在、わが国においては経済産業省の外郭機関であるNEDO(新エネルギー開発機構)からの開発支援を受け、多くの研究機関、民間企業において先端の開発が行われています。

しかしながら、燃料電池の開発は多くの難題を抱えており、決して順調に進んでいないのが現状かと思われます。

冒頭にも記しましたが、現在政府としても開発を急ぎ、「自動車用」「一般家庭用」として、いち早く普及させたいとしている燃料電池は固体高分子型(PEFC)です。

課題は大きく3つあります。

  1. 一つめはコスト問題です。出力1kwあたり4〜5万円が目標ですが、現状では数十倍から数百倍と見積もられ、量産化によりどこまでコストダウンができるかが大きな鍵ですが、「部品点数を大幅に減らす」「構造の簡易化」など、生産技術面でほとんど手がつけられておらず、今後の大きな検討課題です。
  2. 二つめは資源の問題です。固体高分子型燃料電池の電極には貴金属の白金が用いられますが、世界中の白金すべてを使用しても、現在世界中を走る自動車の半分も賄えないという物理的な問題があります。
  3. 三つめは技術面の問題です。技術面ではいくつかの課題がありますが、最も大きな問題は燃料電池の心臓部である電極及び電解質膜の経時的な劣化による性能低下です。燃料電池の寿命は最低10年や15年を求められていますが、現状ではまだ数年といったところで、まだ劣化の原因さえもよくわかっておらず、大きな課題といえます。技術面のもう1つの問題は原料の水素の貯蔵法です。現状の高圧ガス取締法下でガソリン車の燃料タンク並の大きさ・重量の水素ボンベを積載しても連続走行距離は300km程度で、ガソリン車並の500kmを仮定すると計算上では100Mpaという超高圧で水素を貯蔵する必要が生じます。不活性なガスでも100Mpaという超高圧で保存するのは技術的に難しいと思われますが、爆発性の水素をこのような超高圧でボンベに詰め込み自動車に乗せて走ることに対する安全性、信頼性をどのように保証するのかが大きな課題だと思われます。

わが家に燃料電池がやってくる日

このように、燃料電池の開発にはまだまだ大きな難題が山積しているのが現状であり、はたして近い将来、一般に普及するようになるのか、甚だ疑問をもたざるを得ない部分もあります。

しかし、現状では実用化に最も近いといわれる固体高分子型燃料電池(PEFC)のほかにも、表に示したとおり燃料電池には種々の形があり、それぞれの開発が進んでいます。作動温度の問題がありますが、最も作動温度の高い固体酸化物型(SOFC)の開発も進み、むしろ二次電池との併用により実用化に近いところにあるともいわれています。いずれにしても燃料電池は多くの基盤技術のうえに成り立つ技術であり、当面は熾烈な開発競争が続くと思われますが、地球のエネルギー枯渇問題、温暖化問題は待ったなしで目前に迫ってきています。このような課題もいずれはクリアされて、一般家庭にも「燃料電池は当たり前」としてやってくる日を待ちたいと思います。

参考文献及び引用先

注意

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