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環境関連情報

資源・エネルギーの枯渇と再生可能エネルギー(1)

再生可能エネルギーとは

情報発信日:2011-10-27

はじめに

先般、国連より「地球の人口が70億人を超えた」と発表されましたが、地球規模の環境問題には、(1)温室効果ガスが原因とされる地球規模での気候変動問題、(2)毎年3〜4万種の生物が絶滅しているといわれる生物多様性の問題、それと、(3)資源・エネルギーの枯渇問題、この3つが人口の増加と産業の高度化などによってもたらされた3大地球環境危機といわれています。

この資源・エネルギー問題は地球温暖化の問題とも深い関わりがあり、また福島第一原子力発電所の事故以降、世界的に今後のエネルギー問題についての議論が高まってきています。このような状況において、前首相の菅直人氏が再生エネルギー促進法を提案しました。

再生可能エネルギーと聞くと、太陽光、風力、波力、地熱、バイオマスなどが思い浮かぶかと思いますが、果たして再生可能エネルギーは将来、石油や石炭、ウランなどの枯渇性資源エネルギーに取って代ることができる夢のエネルギーなのでしょうか?

残念ながら再生可能エネルギーはまだ夢のエネルギーではなく、いろいろな問題を抱えていることも事実ですが、差し迫った資源・エネルギー問題を解決するためには重要なキーワードになると思います。そこで「再生エネルギーとは何か?」というところから始め、再生エネルギーに関する種々の最新情報を紹介していきたいと思います。

再生可能エネルギーとは

EICネット環境用語集によると、再生エネルギーとは「有限で枯渇の危険性を有する石油・石炭などの化石燃料や原子力用のウランなどと対比して、自然環境の中で繰り返し起こる現象から取り出すエネルギーの総称。具体的には、太陽光や太陽熱、水力(ダム式発電以外の小規模なものを言うことが多い)や風力、バイオマス(持続可能な範囲で利用する場合)、地熱、波力、温度差などを利用した自然エネルギーと、廃棄物の焼却熱利用・発電などのリサイクル・エネルギーを指し、いわゆる新エネルギーに含まれる」と定義しています。

上述の新エネルギーとは、日本における「新エネルギー利用等の促進法に関する特別措置法(新エネルギー法)」によって定義され、その由来から供給サイドでは、(1)自然エネルギー(再生可能エネルギー)、(2)リサイクル・エネルギー、需要サイドでは、(3)従来型エネルギーの新しい利用形態の3つに分類されます。具体的には、1) 太陽光発電、2) 風力発電、3) 太陽熱利用、4) 温度差エネルギー、5) 廃棄物発電、6) 廃棄物熱利用、7) 廃棄物燃料製造、8) バイオマス発電、9) バイオマス熱利用、10) バイオマス燃料製造、11) 雪氷熱利用、12) クリーンエネルギー自動車、13) 天然ガスコージェネレーション、14) 燃料電池、が含まれます。同法は経済性面で実用化が進まない新エネルギーの積極利用を促進することが目的であるため、すでに実用化段階に入った小規模水力発電、地熱発電、あるいは、まだ研究段階の波力発電や海洋温度差発電などは新エネルギーとして指定はされていませんが、自然エネルギーの範疇に入るといえます。このように、新エネルギーとは日本が独自に定義した言葉で、一部に再生可能エネルギーではない従来型エネルギーの新しい利用形態などのエネルギーも含まれますが、通常はほぼ同義語として使用されています。海外では代替エネルギー(alternative energy)ともいわれています。

図1 高効率バイオマス発電実験設備 
(財)電力中央研究場<横須賀市> (2011/09)

図2 風力発電用の風車群 
オーストリア・ウイーン郊外 (2009/08)

再生可能エネルギーの現状と将来

石油や石炭、あるいは天然ガスなどの化石燃料や原子力エネルギー用のウランなどを利用した現在のエネルギー需給形態では、限りある資源がやがては枯渇してしまうという問題のほか、化石燃料の使用による大気汚染物質や温室効果ガスの排出問題、原子力では使用済み燃料を始めとする廃棄物の処理問題などの点において、地球規模での環境問題となっており、当面枯渇の心配がなく且つクリーンで環境負荷の少ないエネルギーとして自然現象を利用した種々の再生可能エネルギーがその実用化に向けて研究・開発されています。枯渇の心配がなく、環境負荷も少ない再生可能エネルギーは果たして夢のエネルギーなのでしょうか? 現状における再生エネルギーの問題点や実用化状況、どの再生エネルギーが最も将来性があるのかなど、最新の事情を調べてみたいと思います。

まず、再生可能エネルギー利用における大きな問題点は、(1)自然現象に頼るため供給が不安定であること、(2)エネルギー密度が低いこと、(3)既存エネルギーに対して高コストであること、(4)現在の生活文化レベルを維持するためのエネルギー量をすべて賄うことが量的にむずかしい、など基本的な問題を抱えており、現状では補助エネルギーとしての利用に留まっていますが、たとえばドイツでは2000年4月に再生可能エネルギー法(REL)が施行され、2050年までに一次エネルギー及び電気の消費において再生可能エネルギーの割合を50%まで引き上げることが目標として定められました。日本においてもエネルギーの安定かつ適切な供給を目的として「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律(石油代替エネルギー法または代エネ法)」(1980年制定)、および、冒頭の「新エネルギー利用等の促進法に関する特別措置法(新エネルギー法または新エネ法)」(1997年制定)が今後のエネルギー政策として施行され、化石エネルギーに代わりうる再生可能エネルギーの占める割合を増大させようとしています。しかしコスト面での障害が大きく、まだまだ不十分とされ、なかなか進まない再生エネルギーに対して同じく冒頭の菅前首相の提案した「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案(再生エネルギー法)」が2011年8月26日に参議院で可決成立しました。これによって既存の電力会社(東京電力や関西電力など)は、個人を含む小口の発電事業者が太陽光や風力など再生可能エネルギーによって得た電力のすべてを、一定の期間(今後15〜20年間)、一定の価格で買い取ることを義務づけられることになります(施行は2012年7月1日予定)。

これによって、再生可能エネルギーの普及が促進される可能性は高まるかもしれませんが、我々一般消費者や企業の支払う電気料金への上乗せが認められることになり、第三者機関が適正な買取り価格を算定することになってはいますが、特定の電気事業者のもうけ過ぎや電力事業者の便乗値上げに対する、十分な監視が必要といえます。

再生可能エネルギーの効率評価

再生可能エネルギーには前述したように種々のものがありますが、一長一短があり現状ではどれが一番優れているかまだ決め手がないのが実情です。このような状況において年間を通して比較的強い風が吹く欧州では図2のような風力発電が増加傾向にありますが、猛禽類に対する被害や発生する低周波による健康被害が課題になっています。日本では半導体技術から派生した太陽電池の高い技術があるため太陽光利用や火山国の特性を生かした地熱発電が実用化されたりしています。このように再生可能エネルギーは一義的に決定されるものではなく、将来的にも地域的な特性などを考慮したさまざまな再生可能エネルギーが採用されるものと思われます。

再生可能エネルギーは、運転時には温室効果ガスや大気汚染物質も排出しないクリーンなエネルギーといわれていますが、最近問われているのは、これら再生可能エネルギーを生み出すための太陽電池用パネルや風力発電用風車などを製造する時点でどの位の温室効果ガスを放出したのか? その装置はどの位の年月稼働できるのか? その結果、当該装置の製造・設置・稼働までのライフサイクルを通して、トータルとしてどの位の省エネルギー、温室効果ガス削減に寄与できるか? といった効率問題が問われてきます。

仮に、ある再生可能エネルギー発生装置がその稼働によって、100の温室効果ガス削減に寄与したとしても、その装置の製造により110の温室効果ガスを発生したのではまったく意味がないどころか、止めるべきということになります。また、経済的にも既存の化石エネルギー利用に比べて、大幅なコストアップになったのでは実用化はむずかしくなります。

これら種々の再生エネルギー発生装置の優劣を評価する手法として、最近、エネルギー・ペイバックタイムおよびコスト・ペイバックタイムという評価手法が取られるようになってきました。エネルギー・ペイバックタイムは、「その装置を作るために消費されたエネルギーは、その装置がどの位の時間稼働することによって取り返すことができるか」、コスト・ペイバックタイムは「その装置を製造するためのコストは、その装置がどの位の時間稼働すれば取り返せるか」といった評価方法として用いられます。現状において、既存エネルギーと比較した場合、再生可能エネルギーはどの程度の位置にあるのか、どの再生可能エネルギーが経済面、環境面で優れているのか? これらについては改めて次回以降に詳しく記したいと思います。

まとめ

現在の石炭・石油や天然ガスなどの、いわゆる化石エネルギーやウランによる原子力エネルギーなどは有限の資源であり、やがては枯渇してしまうこと、および、その使用によって大気汚染や地球温暖化の原因と推定される二酸化炭素など温室効果ガスの排出問題や原子力エネルギーの利用による使用済み核燃料などの廃棄物処理問題は多くの地球規模での環境問題として危惧されています。このような状況において枯渇の心配がなく、環境負荷が少ないため、将来のエネルギーとして期待される再生可能エネルギーの利用促進が各国で進んでいます。

しかし、再生可能エネルギーの多くは自然現象に依存しているため、供給面で不安定であること、エネルギー密度が低いためコスト高であるなど、実用化に向けては多くの課題が山積していますが、環境面を考えるとさらなる効率化とコストダウンを進めるとともにその利用を促進し実用化を進める必要性に迫られているといえます。

次回以降、各種再生可能エネルギーの開発・実用化の状況、および、各種再生可能エネルギーの効率や経済性について紹介して行きたいと思います。

引用・参考文献

注意

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