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環境関連情報

資源・エネルギーの枯渇と再生可能エネルギー(2)

各種エネルギーの環境負荷について

情報発信日:2011-11-25

はじめに

現在、私たちがおもに使用している化石エネルギー(石油や石炭、天然ガスなど)や原子力エネルギー(ウランなど)は埋蔵量が有限であり、やがてはなくなってしまいます。このような使い切り型エネルギーを枯渇性エネルギーと呼びます。

これに対して、太陽の光や熱、地熱、風、潮汐などに由来する自然エネルギーは我々人類が生存している当面の間においては半永久的に利用可能であると考えられ、適切に利用すれば我々が消費する速度以上の速さで再生するため、持続的に利用が可能であり、このようなエネルギー源を再生可能エネルギーと呼びます。

具体的には、太陽光・太陽熱・水力・風力・バイオマス・地熱・海洋エネルギーなどがあります。これら、再生可能エネルギーには種々の利点もありますが、実用化に対しては、自然現象に頼るため供給が不安定であることや、エネルギー密度が低くコスト高など、まだまだ問題点も多くありますが、環境問題などを解決するために多くの再生可能エネルギーの利用が始まっています。しかし、いかに再生可能エネルギーとはいえ、そのエネルギー供給装置を製作する初期の時点及び運転時点では他のエネルギーや資源を消費します。たとえば、風力発電用の風車1基、あるいは太陽発電用パネル1枚を製作するのにどの位の枯渇性エネルギーを使い、どの位の温室効果ガスを排出したのか、そしてその装置が壊れるまでの間にどの位の再生可能エネルギーを作ることができるのか、どの位の温室効果ガス削減に寄与できるのかを計算し、その効率を評価する必要があります。

すなわち、従来の枯渇型エネルギー100を消費して製作した再生可能エネルギー発生装置によって90のエネルギーしか作れなければ、これはまったく意味がありません。このような観点から、経済面及び環境面から各種再生可能エネルギーの比較をしてみたいと思います。

各種再生可能エネルギーの評価法

既存の化石エネルギーや原子力エネルギーなどの枯渇型エネルギーと各種再生可能エネルギーを経済面や環境面でどの程度の違いがあるのか比較してみたいと思います。

1. コストペイバックタイム(CPT: Cost Payback Time)

まず、経済面の評価では「コストペイバックタイム(CPT: Cost Payback Time)」という 指標があります。これは一般的な経済指標で企業が設備投資などを行う場合に、その設備を導入した場合にどの位の期間で投資が回収できるかを測るものです。エネルギー発生装置の場合は、たとえば「太陽電池パネルを設置した場合に、省電力及び売電によって電気代の節約ができますが、この装置を何年使えば初期投資金額が回収できるのか」を計算して評価します。数字が小さいほど、効率が良い設備といえます。

2. エネルギーペイバックタイム(EPT: Energy Payback Time)

環境・エネルギー面では「エネルギーペイバックタイム(EPT: Energy Payback Time)」があります。これは、エネルギー発生設備のライフサイクルにおいて消費した/するエネルギーを、その設備を稼働させることによって、どの位のエネルギーを発生させて、どの位の時間で取り返せるかを示すもので、この値も小さいほど早く消費したエネルギーを取り返せることを意味しますので、値が小さいほど優秀といえます。

3. エネルギー収支比(EPR: Energy Payback Ratio)

エネルギー収支比(EPR: Energy Payback Ratio)は、エネルギー発生設備の製造によって消費したエネルギーに対して、その設備の稼働によって節約できるエネルギーの倍率を表し、この数値が大きいほど優秀な設備と言えます。

EPT=Ein/eav

EPR=Eav/Ein=eav・Tlt/Ein=Tlt/EPT

Ein: 設備のライフサイクル全般で必要とする全エネルギー量
eav: 単位期間中の発電量で節約出来たエネルギー量
Eav: 設備のライフサイクル全般の発電量で節約できたエネルギー量
Tlt: 設備の想定寿命(寿命となるまでの総稼働時間)

たとえば太陽電池の場合
・対象エネルギー設備の生産に用いる材料(シリコン・ガラス・金属・プラスチックなど)の原料採掘・精製・運搬
・対象設備の製造、設置
・対象設備の保守用部品の製造・運搬
・対象設備の使用後処理(解体・廃棄・リサイクルなど)

エネルギー源としてはEPTが設備の寿命より十分に短いこと、またはEPRが”1”よりも十分に大きいことが求められます。

 

各種再生可能エネルギーの評価結果

再生可能エネルギーの実用化の状況として、風力発電は年間を通して比較的強い風が吹く欧州で多くみられ、半導体工業の発達した日本においては太陽光発電がよくみられるなど地域特性が現れています。研究開発が盛んに行われてエネルギー変換効率は年々向上していますが、(独) 産業技術研究所 太陽光発電研究センターが2008年に各種エネルギー源に関するEPT(エネルギーペイバックタイム)、EPR(エネルギー収支比)及び温暖化ガス排出量などの結果を国内における実績値を集計して報告していますので以下に紹介します。

図1に各種エネルギーのエネルギーペイバックタイムを示していますが、小規模水力発電が0.6年と最も優れており、次いで地熱発電0.9年、風力発電が0.56〜0.79年と1年以内で初期投資が回収できています。これに対して、国内で多くみられる太陽光発電は旧技術1.4〜2.6年から最新技術0.96〜1.9年と進歩はみられますが、まだ風力や水力、地熱には追いついていないのが見てとれます。

一方、図2には各種エネルギー源におけるエネルギー収支比(EPR)が示されていますが、小規模水力発電が50倍、次いで風力発電が38〜54倍、次いで地熱発電が31倍、太陽光発電では旧来技術で12〜21倍、最新技術でも16〜31倍と、やはり、EPT同様に小規模水力、地熱、風力に対して劣っていることが見てとれます。

図3には各種エネルギー源による発電量当たりの温暖化ガス排出量を示します。これによると、石油や石炭などの枯渇性エネルギーが519〜975g-CO2/kWhなのに対して、多くが大幅に削減されているのがわかります。

まとめ

地球の資源・エネルギーの枯渇問題は地球温暖化や大気汚染の問題とも深く関わる重要な問題として位置づけられ、太陽光、太陽熱や風力、地熱、潮汐などの自然現象にともなって発生するエネルギーはクリーンかつ半永久的に利用可能で、適切に利用すれば我々が消費する速度以上の速さで再生するため再生可能エネルギーと呼ばれ、次世代のエネルギーとして大きな期待がもたれ、種々のエネルギーが開発されています。

これら再生可能エネルギーは種々の長所を有する半面、自然現象に依存するため供給が不安定であることや、エネルギー密度が未だ低くコスト高であるなどの問題点も抱えていることも事実です。

このような状況において、(独)産業技術研究所太陽光発電研究センターが2008年に報告した各種再生可能エネルギーの相互比較を行った結果によると、設置場所の制限はありますが、エネルギー源の優劣評価の指標となるエネルギーペイバックタイム(EPT)とエネルギー収支比(EPR)をみると小規模水力発電、風力発電、地熱発電が実用化に対して一歩進んでおり、太陽光発電がこれを追って開発が進められている様子が見てとれます。

現状では、まだまだ既存の枯渇性エネルギー源と比較すると、広く普及させるための一番の問題となるコスト面で大きく劣っていますが、国策としてこれらのエネルギーの普及促進に対する優遇措置も図られてきていますので、今後はさらなる研究開発が進むとともに、さらなる再生可能エネルギーの利用が進むものと思われます。

参考文献及び引用先

注意

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