ホーム > 環境について > 環境関連情報 > 2030年温室効果ガス排出量26%削減に向けて #1

環境関連情報

2030年温室効果ガス排出量26%削減に向けて #1

迫られる究極の省エネ

情報発信日:2016-1-26

はじめに

2015年12月24日付け本コラム「新たな段階に入った温室効果ガス削減への道 COP21「パリ協定」を採択〜実質排出量「ゼロ」に向けて合意〜 」でも述べましたが、1997年12月に京都で開催されたCOP3において採択された京都議定書で、欧州及び日本など世界の55ヶ国が参加し2008年から2012年までの期間、地球の気候変動を緩和するために温室効果ガスの排出量削減に多くの努力が払われてきました。

しかし、「世界第1位と第2位の排出国であり、全世界の温室効果ガスの半分弱を排出している中国と米国が参加しない削減には意味がなく不公平」だとして、日本やカナダなどが離脱を表明するなど、一時は全く先行きが見えない状況に陥っていましたが、2015年11月30日からパリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議)において、締約国196ヶ国の全てが目標値を公開して温室効果ガスの排出量削減に努力するという、「パリ協定」が採択されました。

この「パリ協定」において、我が国は、2020年に▲3.8%(2005年比)、2030年に▲26%(2013年度比)、▲25.4%(2005年度比)、2050年には何と▲80%の温室効果ガス削減目標を世界に向けて発信しています。パリ協定では「5年ごとに目標に対する結果のレビューと、退化しない目標見直し」を義務付けていますので、今後も大幅な目標値の変更はないものといえます。

一方、このような前代未聞の「急激な温室効果ガス削減」を、政府はどのような目論見で進めようとしているのでしょうか。また、私達の企業活動や日常生活がどのような方向で影響を受けて変化して行くのか興味のあるところだと思われますので、3回に渡り現在政府が大筋を示している方向性に沿って関連情報をまとめて行きたいと思います。

今回は、政府が第一に挙げている「省エネ」についてです。

現在進んでいる省エネシステム

2016年1月号の日経エコロジーは「2016年に大きなテーマとなる省エネ特集『異次元省エネがやってくる』です」と、パリ協定による温室効果ガス削減のための行動の第一歩を「異次元の省エネ」と呼んでいます。

また「日本が世界に表明した『2030年度に2013年度比で温室効果ガスを26%削減』するためには、業務部門の省エネがポイントになる」といった問題意識のもと、ビルに焦点を充てています。「BEMS(ビルエネルギー管理システム)やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及で広がり始めている『新省エネ市場』は新たなビジネスチャンスも生み出しています」とも、述べています。

政府も、2050年の温室効果ガス▲80%達成の内訳を、省エネで40%、再生可能エネルギーの利用で30%、残り10%を二酸化炭素の吸収・貯留で達成すると計画しています。

そこで、BEMS、HEMS、FEMS、CEMSなどのエネルギー管理システムや、経済産業省が進めている究極の省エネ、ZEBやZEHなどと呼ばれる省エネシステムを中心に、現在取り組まれている省エネシステムについて説明して行きたいと思います。

まず、省エネを行うには電力使用量を可視化して、節電を行う必要がありますが、これを行うための様々な機器を無駄なく稼働するように制御したり、太陽光発電や風力発電などで得た再生可能エネルギーや蓄電器の適正制御を行ったりする事が重要です。このようなエネルギー監理システムをEMS(Energy Management System)と呼び、一般家庭向けをHEMS(Home Energy Management System)、商用ビル向けをBEMS(Building Energy Management System)、工場向けをFEMS(Factory Energy Management System)、そしてこれらを含んだ地域全体のシステムをCEMS(Cluster/Community Energy Management System)と呼びます。

各システムともに対象が異なりますが、基本は照明、空調、換気、その他の各種電気・電子機器などの電力使用量をモニターするとともに、最適な電力供給を行うものです。また、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーや燃料電池で得た電力、電気自動車などの蓄電器と連動して最適な電力使用を得ようとするものです。

具体的なアプリケーション例としては、配電盤(電力消費量のモニター、ピーク電力のカット・調整<制限電力を超えそうになると、一時的に空調を調整するなど>)、熱源(温湿度モニター、ボイラー、冷凍機、冷却水温度、空調機など熱源の制御)、照明(天気や時間に合わせた照明のオンオフや調光などの制御)、発電(太陽光や燃料電池の発電量監視と発電効率化制御)、蓄電(蓄電池や電気自動車などの蓄電量と充電量の監視)などがあります。

これらのシステムを効率的に連動させるためには、相互の設備や機器の情報を全て一括して監理する必要がありますが、現状でそれらを行うには多くのセンサーや配線、制御システムが必要となります。特に、超高層のビルなどで多くのテナントが入るような場合、あるいは、大きな工場などにおいては多くの投資が必要になってしまいます。

このような状況において、全ての電気・電子機器や発電・蓄電設備などの情報を全てインターネットで繋ぐ計画が進みつつあり、これをIoT(Internet of Things)、IoE(Internet of Everything)と呼びます。もちろん、各機器・設備が持つセンサーや制御システムが共通のプロトコルで結ばれる必要がありますが、その開発・共通化の方向も開発が進んでいるようです。

これから始まる「異次元の省エネ」ZEH、ZEBとは

ZEHとはNet Zero Energy House、 ZEBとはNet Zero Energy Buildingの各々略で、家庭やビルが年間に消費する一次エネルギー(石油・天然ガスなどの化石燃料や水力、太陽エネルギーなど、自然界に存在するものから得られるエネルギーのこと。一次エネルギーを加工して得られる電気などは二次エネルギーと呼ばれています)よりも、自前で作りだしたエネルギーの方が多い、もしくはその差が正味(ネット)ゼロになることをいいます。消費電力の無駄を省く「省エネ」と、太陽光発電などでエネルギーを作り出す「創エネ」、または前述のエネルギー消費の最適化を行う「HEMSやBEMS」を組合せて活用します。日本政府は「2020年までにZEHを標準的な住宅にする」というロードマップを公開しています。

経済産業省がZEHやZEB特にZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)に力を入れている背景には、我が国の最終エネルギー消費の推移の中で全体の3割以上を占める民生部門が、産業・運輸部門に比し、過去からの増加が顕著であることがあります。

民生部門の過半を占める業務部門(オフィスビル、小売店舗、病院、学校等)については、家庭部門より増加が著しく、その最終エネルギー消費は対1990年比で4〜5割程度増加した後高止まりしており、省エネ対策の強化が最も求められている部門です。

図1 我が国の最近のエネルギー需給推移

 

図2 ZEB(Net Zero Energy Building)のイメージ

 

業務部門の省エネのポテンシャルは大きく、国際エネルギー機関(IEA)が、2008年の洞爺湖サミットにおいて、「(ネット)ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」へ向けての取組加速を勧告しました。これを受けて我が国でも、新築公共建築物での2030年までのZEB化に向けて開発を加速しています。

(ZEBに至るための省エネ技術)
・パッシブ建築(高断熱、日射遮蔽)
・自然エネルギー利用(外気冷房、外気を利用した夜間冷房、室内CO2濃度による外気取入量制御)
・高効率熱源
・低消費搬送(インバータ採用)
・高効率照明(LED照明など)
・低消費OA機器(低電力消費サーバー、低電力消費PCなど)
・その他の電力消費削減(低電力消費防犯・防災用機器、待機電力削減など)
・高効率太陽光発電・壁面設置
・その他

図3 ZEB達成に向けた主な課題

 

現状の省エネ建築技術を総合設計し、統合制御することで、5割程度の省エネの可能性があります。残りの5割を以下の課題を克服することで達成を見込んでいます。
・エネルギーの面的利用:複数のビル群のネットワーク化によるエネルギーの有効利用。
・都市の未利用エネルギーの活用:河川熱、下水熱などのヒートポンプ利用。
・テナントビル:オーナーとテナントのインセンティブ乖離、汎用性を確保する必要性(自社ビルのような思い切った省エネ設計が難しい)といった課題への対応。
・標準化:統合制御を可能とするための設備・機器間のインターフェースやデータ仕様の標準化。

図4 2030年に向けたZEB化計画

 

2030年に▲26%(2013年度比)、▲25.4%(2005年度比)の温室効果ガス削減を達成するための施策の1つとして、新築ビルの100%、既存ビルの改修50%をZEB化すると計画されています。

計画の推進には、技術面の他にワークスタイル、制度面(規制、支援・誘導、社会への情報発信・啓発)などが必要でこれを支援して行きます。

まとめ

(1) 2015年11月30からパリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議)において、締約国196ヶ国の全てが目標値を公開して温室効果ガスの排出量削減に努力するというパリ協定が採択された。
(2) 我が国は、2020年に▲3.8%(2005年比)、2030年に▲26%(2013年度比)、▲25.4%(2005年度比)、2050年には▲80%の温室効果ガス削減目標を世界に向けて発信している。
(3) 我が国政府は、2050年▲80%の温室効果ガス削減の内訳を省エネで40%、再生可能エネルギーの利用で30%、残り10%を二酸化炭素の吸収・貯留で達成すると計画している。
(4) 2030年に向けた省エネは「異次元」と称される「野心的」なものである。
(5) ZEH、ZEB達成のための技術は、最新の省エネ機器・技術をネットワーク化してエネルギー監理システムEMS(Energy Management System)を利用して監理・制御する。
(6) 最終的には家庭やビルが年間に消費する一次エネルギー(石油・天然ガスなどの化石燃料や水力、太陽エネルギーなど、自然界に存在するものから得られるエネルギーのこと。一次エネルギーを加工して得られる電気などは二次エネルギーと呼ばれています)よりも、自前で作りだしたエネルギーの方が多い、もしくはその差が正味(ネット)ゼロになるZEH(Net Zero Energy House)、 ZEB(Net Zero Energy Building)を構築する計画。
(7) 技術面の開発と併せ、ワークスタイル、制度面(規制、支援・誘導、社会への情報発信・啓発)などの施策も導入して新築ビルは100%、既存ビルは改修により50%をネットゼロエネルギー化する計画。

引用・参考資料

注意

情報一覧へ戻る