ホーム > 環境について > 環境関連情報 > 2030年温室効果ガス排出量26%削減に向けて #2
情報発信日:2016-2-26
2015年11月30日よりフランスのパリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議)において、締約国196ヶ国全てが温室効果ガス排出量について削減努力目標を持つとした「パリ協定」が採択されました。
この「パリ協定」において我国は、2020年に▲3.8%(2005年比)、2030年に(▲26%<2013年度比>)、▲25.4%<2005年度比>)、2050年には実に▲80%の温室効果ガス削減目標を世界に向けて発信しています。
政府は2050年の温室効果ガス▲80%達成の内訳を、省エネで40%、再生可能エネルギーの利用で30%、残り10%を二酸化炭素の吸収・貯留で達成すると計画しています。
このうち「省エネ」の現状と将来については、2016年1月26日付けの本コラム「2030年温室効果ガス排出量26%削減に向けて #1」で述べましたので、今回は「世界全体の再生可能エネルギーの現状と将来」について解説したいと思います。
資源エネルギー庁のホームページによると、「『再生可能エネルギー』とは、法律(※)で『エネルギー源として永続的に利用することができると認められるもの』として、太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱その他の自然界に存する熱、バイオマスが規定されています。再生可能エネルギーは、資源が枯渇せず繰り返し使え、発電時や熱利用時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素をほとんど排出しない優れたエネルギーです」と定義しています(図1)。
※ ここでいう法律とは「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」を指しています。
我国におけるエネルギーは、図2に示す通り、天然ガス、石炭、石油などの化石燃料に依存しており、全体の80%を占めています。一方、再生可能エネルギーは、温室効果ガスをほとんど排出せず、かつ永続的に使用出来ることから、世界各国が競ってその導入量を増やしています。
しかし、再生可能エネルギーの導入に当たっては、設備の価格が高く、日照時間や気象等の自然状況に左右されるなどの理由から利用率が低い等の課題があるため、火力発電などの既存のエネルギーと比較すると発電コストが高く、出力が不安定で、地形等の条件から設置できる地点も限られるなどの欠点があります。
しかし、これらの欠点も、例えば太陽光パネルの大量生産によるコストダウンや効率的な蓄電設備と送電網のスマート化などの技術革新などにより克服されつつあります。
図3の示す通り、2012年における世界の最終エネルギー消費における推計値では化石エネルギーが78.4%ですが、再生可能エネルギーは19%と、原子力発電の2.6%を大きく上回っています。しかし、内訳を見ると、約半分が近代的な再生可能エネルギーで、残りは古くからのバイオマスです。さらに、近代的な再生可能エネルギーにおいても、風力発電、太陽光、バイオマス、地熱発電などは、未だ全体の1.2%しかないことがわかります。
注) REN21運営委員会とは、米国再生可能エネルギー評議会、中国再生可能エネルギー産業協会、欧州再生可能エネルギー連盟などの産業団体、アジア開発銀行、欧州委員会、国際エネルギー機関、世界銀行などの国際機関、その他国際的なNGOなどにより構成される国際的な機関
しかし、表1に示す通り、世界における再生可能エネルギーは設備投資及び発電量が急速に増加している状況が見てとれます。
表1 2013年度における再生可能エネルギーに関する主要な指標
投資 | 単位 | 2004年初頭 | 2012年末 | 2013年末 |
---|---|---|---|---|
再生可能エネルギー発電及び燃料への投資/年 | 10億US$ | 39.5 | 249.5 | 249.4 |
電力 | 単位 | 2004年初頭 | 2012年末 | 2013年末 |
再生可能エネルギー発電容量(水力は除く) | ギガワット | 85 | 480 | 560 |
再生可能エネルギー発電容量(水力を含む) | ギガワット | 800 | 1.440 | 1,560 |
水力発電容量合計 | ギガワット | 715 | 960 | 1,000 |
バイオマス発電容量 | ギガワット | 36以下 | 83 | 88 |
バイオマス発電量 | テラワット/時 | 227 | 350 | 405 |
地熱発電容量 | ギガワット | 8.9 | 11.5 | 12 |
太陽光発電容量合計 | ギガワット | 2.6 | 100 | 139 |
集光型太陽熱発電容量合計 | ギガワット | 0.4 | 2.5 | 3.4 |
風力発電容量合計 | ギガワット | 48 | 283 | 318 |
熱利用 | 単位 | 2004年初頭 | 2012年末 | 2013年末 |
太陽熱温水システム容量合計 | ギガワット熱 | 98 | 282 | 326 |
(出典:REN21運営委員会 再生可能エネルギー白書2014)
以上で示すように、太陽光発電や風力発電が急増していることがわかります。
表2 2013年度における再生可能エネルギーへの年間投資/新規導入量/生産量上位5ヶ国
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
---|---|---|---|---|---|
再生可能エネルギー発電と燃料への投資 | 中国 | アメリカ | 日本 | イギリス | ドイツ |
(2012年のGDP比の投資) | ウルグアイ | モーリシャス | コスタリカ | 南アフリカ | ニカラグア |
地熱発電所の新設 | ニュージーランド | トルコ | アメリカ | ケニア | フィリピン |
水力発電所の新設 | 中国 | トルコ | ブラジル | ベトナム | インド |
太陽光発電所の新設 | 中国 | 日本 | アメリカ | ドイツ | イギリス |
集光型太陽熱発電所の新設 | アメリカ | スペイン | UAE | インド | 中国 |
風力発電所の新設 | 中国 | ドイツ | イギリス | インド | カナダ |
太陽熱利用システムの新設 | 中国 | トルコ | インド | ブラジル | ドイツ |
バイオディーゼル油生産量 | アメリカ | ドイツ | ブラジル | アルゼンチン | フランス |
バイオエタノール生産量 | アメリカ | ブラジル | 中国 | カナダ | フランス |
(出典:REN21運営委員会 再生可能エネルギー白書2014)
表3 2013年末における再生可能エネルギー発電容量と熱利用
発電 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 |
---|---|---|---|---|---|
再生可能エネルギー発電容量 (水力を含む) |
中国 | アメリカ | ブラジル | カナダ | ドイツ |
再生可能エネルギー発電容量 (水力を含まない) |
中国 | アメリカ | ドイツ | スペイン イタリア |
インド |
1人当たりの再生可能エネルギー発電容量 (水力を含まない) |
デンマーク | ドイツ | ポルトガル | スペイン スエーデン |
オーストリア |
バイオマス発電容量 | アメリカ | ドイツ | 中国 | ブラジル | インド |
地熱発電容量 | アメリカ | フィリピン | インドネシア | メキシコ | イタリア |
水力発電容量 | 中国 | ブラジル | アメリカ | カナダ | ロシア |
集光型太陽熱発電容量 | スペイン | アメリカ | UAE | インド | アルジェリア |
太陽光発電容量 | ドイツ | 中国 | イタリア | 日本 | アメリカ |
1人当たりの太陽光発電容量 | ドイツ | イタリア | ベルギー | ギリシャ | チェコ |
風力発電容量 | 中国 | アメリカ | ドイツ | スペイン | インド |
1人当りの風力発電容量 | デンマーク | スエーデン | スペイン | ポルトガル | アイルランド |
熱利用 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 |
太陽熱利用システム容量 | 中国 | アメリカ | ドイツ | トルコ | ブラジル |
1人当たりの太陽熱利用システム容量 | キプロス | オーストリア | イスラエル | バルバトス | ギリシャ |
地熱の熱利用容量 | 中国 | トルコ | アイスランド | 日本 | イタリア |
(出典:REN21運営委員会 再生可能エネルギー白書2014)
表2、表3から、再生可能エネルギーに対する投資額及び発電容量を見ると、必ずしも先進国が多く、途上国が少ないという傾向は見られません。むしろ、一人当たりの利用量では少ないものの、中国が再生可能エネルギー開発に意欲的に取り組んでいる姿が見て取れます。
世界全体で見ると、再生可能エネルギー開発に関する投資の伸び率は太陽光発電、集光型太陽熱発電が高く、次いで風力発電が高くなっています。製造業や商業においても、積極的に再生可能エネルギーへの切り替えが進んで来ていますが、成長率は2008〜2013年末までと2013年度単独の比較では鈍化しています。理由としては、原油の価格や経済状況もあると思われますが、世界の一般的なエネルギーに関する補助金制度、未だに化石燃料を優遇する仕組みが妨げになっており、これを早期に改善する必要があるようです。
PM2.5問題で大きな社会問題が起こっている中国ですが、再生可能エネルギー発電容量では世界No.1ということは余り知られていません。国策として脱化石エネルギーによるエネルギーの安定確保があるようです。
](1) 世界における再生可能エネルギーの開発状況は、全エネルギーのうち19%を占め、原子力発電の2.6%を大幅に上回っている。
(2) 現状における再生可能エネルギーの約半分が古典的な水力発電であり、残り半分が風力発電や太陽光発電、バイオマスなどの近代的な再生可能エネルギーであるが、それでも原子力発電よりもはるかに多い。
(3) 再生可能エネルギー開発は、欧米の先進国が多く、途上国は少ないという印象があるが、投資額及び発電容量はアジアやアフリカの途上国でも多く、特に中国では国策として再生可能エネルギーの開発が積極的に行われている。
(4) 各国・各地域で採用される再生可能エネルギーの種類には多様性があり、日本や中国などアジアでは太陽光発電が多く、欧州では風力発電、アメリカはバイオマスなどの傾向が見られる。
(5) 日本は再生可能エネルギー開発投資において世界3位、太陽光発電容量は世界2位となっていますが、世界全体から見ると、まだまだ再生可能エネルギー開発では途上国であるように見える。
次回は、我国の再生可能エネルギー事情と将来どの方向に向かうのか、経済産業省の資料を中心に見て行く予定です。