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環境関連情報

「地球温暖化対策計画」が閣議決定

低炭素社会構築に向けての長期的な方向が示される

情報発信日:2016-6-17

はじめに

環境省は平成28年(2016年)5月13日付けにて「『地球温暖化対策計画』の閣議決定について」と題する我国における地球温暖化防止を進める上での中長期的な基本計画を公表しました。

今回閣議決定された「地球温暖化対策計画」は、2015年末にフランスで開催されたCOP21において採択された「パリ協定」で、我国の約束草案である「2030年に温室効果ガス26%削減、さらには2050年には80%削減」を達成するための道筋を示すものといえます。

今回は、この「地球温暖化対策計画」の概要、特に目標達成のための事業者の基本的役割について解説します。

地球温暖化対策計画 (2016年5月13日閣議決定 )概要

2016年5月13日付けで閣議決定された「地球温暖化対策計画」は、本文71ページ、付表108ページから構成され、目次は以下の通りです。

はじめに

第1章 地球温暖化対策の推進に関する基本的方向

第1節 我が国の地球温暖化対策の目指す方向

世界の温室効果ガス削減に向けた取組と、我国の中(2030年)長期(2050年)目標達成のための取組等

第2節 地球温暖化対策の基本的考え方

パリ協定及び日本の約束草案達成のための、環境・経済・社会の統合的な向上、研究開発による低炭素化技術開発等

第2章 温室効果ガスの排出抑制・吸収の量に関する目標

第1節 我が国の温室効果ガス削減目標

第2節 我が国の温室効果ガスの排出状況

第3節 温室効果ガス別その他の区分ごとの目標

温室効果ガス種別(エネルギー起源CO2、非エネルギー起源CO2、メタン、代替フロン等)毎の削減目標と吸収源等

第4節 個々の対策に係る目標

第5節 計画期間

第3章 目標達成のための対策・施策

第1節 国、地方公共団体、事業者及び国民の基本的役割

1.「国」の基本的役割
<略>
2.「地方公共団体」の基本的役割
<略>
3.「事業者」の基本的役割
(1)事業内容等に照らして適切で効果的・効率的な対策の実施
(2)社会的存在であることを踏まえた取組
(3)製品・サービスの提供に当たってのライフサイクルを通じた環境負荷の低減

4.「国民」の基本的役割
日常生活に起因する温室効果ガスの排出抑制と地球温暖化防止活動への参加

第2節 地球温暖化対策・施策

1.温室効果ガスの排出削減、吸収等に関する対策・施策
(1)温室効果ガスの排出削減対策・施策
① エネルギー起源二酸化炭素
部門別(産業・民生・運輸等)の対策・施策
A.産業部門(製造事業者等)の取組
(a) 産業界における自主的取組の推進
(b) 省エネルギー性能の高い設備・機器の導入促進
(c) 徹底的なエネルギー管理の実施
(d) 業種間連携省エネの取組推進

B.業務その他部門の取組
自主取組推進(省エネ建築物・設備・機器等の導入、エネルギー管理など)
C.家庭部門の取組
国民的な運動、省エネ住宅・設備・機器等の導入、エネルギー管理等
D.運輸部門の取組
自主的取組の推進(環境配慮自動車の採用、公共交通機関・自転車などの利用促進、低炭素物流等)
E.エネルギー転換部門の取組
自主的取組の推進(再生可能エネルギーの最大限導入、電力分野のCO2排出低下、石油製品製造分野の省エネ等)
温室効果ガス吸収源対策(森林、農地土壌、都市緑化等)
2.分野横断的な施策
(1)目標達成のための分野横断的な施策
国内クレジット制度、国民運動推進、低炭素型都市・地域・社会経済システム構築等
(2)その他の関連する分野横断的な施策
水素社会の実現、事業活動における環境配慮推進、二国間クレジット促進、グリーン税制(地球温暖化対策税導入等)
3.基盤的施策
(1)気候変動枠組条約に基づく温室効果ガス排出・吸収量の算定のための国内体制の整備
(2)地球温暖化対策技術開発と社会実装
(3)気候変動に係る研究の推進、観測・監視体制の強化

第3節 公的機関における取組

第4節 地方公共団体が講ずべき措置等に関する基本的事項

<略>

第5節 特に排出量の多い事業者に期待される事項

第6節 国民運動の展開

第7節 海外における温室効果ガスの排出削減等の推進と国際的連携の確保、国際協力の推進

1.パリ協定に関する対応
2.我が国の貢献による海外における削減
二国間クレジット、産業界における海外事業、森林減少対応など
3.世界各国及び国際機関との協調的施策

第4章 地球温暖化への持続的な対応を推進するために

第1節 地球温暖化対策計画の進捗管理

1.進捗管理方法
2.定量的評価・見直し方法の概略
(1) 温室効果ガス別その他の区分ごとの目標に関する評価方法
発生源、発生ガス種別毎の削減目標及び評価、吸収源活用と評価等
(2)JCM及びその他の国際貢献に関する評価方法
(3) 温室効果ガスの排出削減、吸収等に関する対策の評価方法

第2節 国民の努力と技術開発の評価方法

1.国民の努力の評価方法
2.研究開発及び技術開発の評価方法

第3節 推進体制の整備

<別表略>

事業者の基本的役割及び産業部門(製造事業者等)の取組について

第3章「目標達成のための対策・施策」において、「事業者」の基本的役割及び産業部門(製造事業者等)の取組に関する記述がありますので紹介します。

※事業者の基本的な役割

(1)事業内容等に照らして適切で効果的・効率的な対策の実施

法令を遵守し、創意工夫と事業内容等に照らして適切で効果的・効率的な地球温暖化対策を幅広い分野で自主的かつ積極的に実施する。また、省CO2型製品の開発、廃棄物の減量等、他の主体の温室効果ガスの排出の抑制等に寄与する措置も推進する。

(2)社会的存在であることを踏まえた取組

事業者は社会の一員の自覚を持ち、単独又は共同で自主的に計画し、実施状況を点検する。従業員への環境教育を実施すると共に、労働組合や消費者団体・地域団体等と連携した温室効果ガスの排出抑制、企業による敷地内の緑化等による温室効果ガス吸収源対策等に取り組む。また、国、地方公共団体の施策に協力する。

(3)製品・サービスの提供に当たってのライフサイクルを通じた環境負荷の低減

製品・サービスのサプライチェーン及びライフサイクルを通じ、温室効果ガスの排出量等の把握に努めるとともに、カーボン・オフセットを含め、これらの環境負荷低減に寄与する製品・サービスの提供を図る。製品・サービスによる温室効果ガス削減に関連する情報を提供する。

※産業部門(製造事業者等)の取組

産業部門における温室効果ガス排出量は我国総排出量の3割を占める。産業部門における2013年度のCO2排出量は2005年度比▲6.0%であった。産業部門の温室効果ガス排出量削減が重要であり、事業者は消費者・顧客を含めた連携、国際貢献、革新的技術開発により低炭素社会の実現に取り組む。

※産業界における自主的取組の推進

京都議定書に対し経団連をはじめとする産業界の自主的な温室効果ガス削減努力による一定の成果が上がっており、引き続き中心的な役割を持ち、さらなる努力を要請する。

自主的取組に透明性、信頼性、目標達成の蓋然性等の観点から一定程度政府による関与は必要であるが、各主体の創意工夫を尊重する。

2013年以降、個別業種団体単位で「低炭素社会実行計画」の策定・実行が望ましく、定期的な評価及び検証を行う。

(1) 低炭素社会実行計画を策定していない業種においては、京都議定書目標達成計画における自主行動計画に参加している業種はもとより、参加していない業種についても新規に策定するよう積極的に検討する。

以下に掲げる業種について、関係府省庁は、所管業種に対する策定検討の働きかけを強化する。

京都議定書目標達成計画における自主行動計画に参加している業種で、2030 年に向けた低炭素社会実行計画の未策定業種

たばこ製造※、パン工業※、缶詰等※、製粉※、民間放送※、日本放送協会、テレコムサービス、ケーブルテレビ、インターネットプロバイダー、全私連※、生活協同組合※、加工食品卸※、自動車整備、旅館、産廃※、新聞※、バス※、港運※、JR北海道※(※は2020 年までの低炭素社会実行計画策定業種)

(2) 低炭素社会実行計画における目標設定においては、温室効果ガスの排出削減の観点から、経済的に利用可能な最善の技術(BAT: Best Available Technology)の最大限の導入、積極的な省エネルギー努力等をもとにCO2削減目標を策定している。目標については、それが自ら行い得る最大限の目標水準であることを対外的に説明する。設定された目標水準の厳しさや産業界の努力の程度を評価することができるよう、日本と各国とのエネルギー効率やCO2排出量の比較が可能となるようなデータの収集に努めることが重要である。また、BATやベストプラクティスについては、あらかじめ明示することにより、目標水準の達成状況だけでなく各業種においてなされた取組努力を評価することが可能になる。技術の発展等により新たなBATの普及が可能となった場合には、柔軟に数値目標を引き上げるなど、不断の見直しを行う。

(3) 低炭素社会実行計画では、実効性・透明性・信頼性を確保するため、これまで同様PDCAサイクルを推進する。その際、2030 年に向けた計画等については長期の取組であることを踏まえ、前提となる条件を明確化し、透明性を確保しながら、社会・産業の構造の変化や技術革新の進歩など様々な要因を考慮していく。

(4) (2)で掲げた自らの排出削減目標(コミットメント)に加えて、低炭素製品・サービスの提供を通じて、関連業種とも連携しながらCO2排出量の削減に貢献する。さらに、地球温暖化防止に関する国民の意識や知識の向上にも取り組む。

(5)世界全体での地球温暖化対策への貢献の観点から、各業種は、低炭素製品・サービス等の海外展開等を通じた世界規模での排出削減、地球温暖化防止に向けた意欲ある途上国への国際ルールに基づく技術・ノウハウの移転や、民間ベースの国際的な連携活動の強化等に積極的に取り組むとともに、各業種の事業分野に応じた取組による削減貢献を示していく

(6)各業種は、2030 年以降も見据えた中長期的視点で、革新的技術の開発・実用化に積極的に取り組む。

(7)また、低炭素社会実行計画に基づく取組について、海外や消費者等への分かりやすい情報発信を行うため、各業種において、信頼性の高いデータに基づく国際比較等を行うとともに、積極的な対外発信を行う。

上記(1)〜(7)の観点に基づき、政府は、各業種により策定された低炭素社会実行計画及び2030年に向けた低炭素社会実行計画に基づいて実施する取組について、関係審議会等による厳格かつ定期的な評価・検証を実施する。

まとめ

(1)製造業にたいしては、業界団体毎の「低炭素社会実行計画」の策定・実行を要求。
(2)京都議定書に対する自主目標策定業種には、さらなる厳しい実行計画の策定・実行を要求。
(3)未策定の業種団体には、新規に策定を強く要求し、特に指定の業種・企業には強く働きかける。
(4)目標の策定は業種団体の自主性に任せるが、目標達成の透明性・信頼性・目標達成の蓋然性等から一定程度政府が関与する。
(5)目標設定については、経済的に利用可能な最善の技術(BAT: Best Available Technology)や生産におけるベストプラクティスや諸外国のエネルギー効率や温室効果ガス排出量諸元などのデータを用いるなど、対外的に目標値の妥当性・厳しさが説明できるものとする
。 (6) (1)〜(5)まで、業種団体の自主性は尊重するが、一定程度の政府関与や目標値の対外的な妥当性説明など、かなり厳しい要求を示している。
(7)また、「温室効果ガス対策税」を示唆するなど、温室効果ガス排出に対する有料化の方向を示している。

引用・参考資料

注意

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