自動弁の世界

バルブにはどんな種類があるの?では、人の手でハンドルやレバーを開け閉めする手動弁として6種類の基本的なバルブを紹介しました(逆止め弁は手で動かすわけではありませんが)。これに対し、自動弁は文字通り、人が操作することなく自動で働いてくれるバルブです。

自動弁は大きく2種類に分けられます

自動弁は、バルブに取り付けた駆動部(アクチュエータ)など外部から得た力で動く「他力式自動弁」と、流体そのものの力を利用して動く「自力式自動弁」に分けられます。大ざっぱなくくりとしては、「調節弁」「電磁弁」と呼ばれる自動弁が他力式、その他の自動弁が自力式となります。

自動弁 他力式自動弁 自力式自動弁

調節弁(コントロールバルブ)

調節弁は、バルブにはどんな種類があるの?でも紹介した玉形弁やバタフライ弁などにアクチュエータが取り付けられ、このアクチュエータからの動力によって作動するバルブです。アクチュエータは空気圧、電力、油圧を動力源としていて、空気圧方式がもっともよく用いられています。

玉形弁やバタフライ弁の特長として「中間開度で使えて流量調整ができる」ということを説明しましたが、これは所定の流量を流すためにバルブの開度を中間位置で固定できるという意味で、手動弁では開度を頻繁に変えることはありません。

一方、化学プラントや石油プラントなどのシステム全体を制御する「プロセス制御」の操作端として使われる調節弁は、センサーから送られてくる信号(流量などの情報)に応じて常に正しい流量を保つため、開度が頻繁に自動調節されます。信号を読み取って開度の指示を出すのは「ポジショナ」という機器で、調節弁とはセットで使われます。
手動弁や他の自動弁に比べ、より精密な流量調節(ほかにも圧力調節、温度調節など)を可能にするのが、調節弁です。

調節弁(コントロールバルブ)01

調節弁(コントロールバルブ)02

電磁弁

「電磁弁」は電磁石の力で急速開閉ができるバルブで、全開か全閉、どちらかのみの状態にするON-OFF弁です。配管の緊急遮断または緊急開放を目的としてさまざまな工業分野で使われていますが、身近なところでは、レストランやオフィスビルのトイレでよく見かける自動水栓(手を出すと水が出て、手を引っこめると水が止まる蛇口)にも電磁弁が組み込まれています。手の動きをセンサーが感知して、即座に電磁弁が開閉する仕組みです。他にも、全自動洗濯機や都市ガスにも使われています。

電磁弁01

電磁弁02

調節弁と電磁弁は電気製品?

バルブの国際規格のほとんどはISO(国際標準化機構)で作られていますが、調節弁と電磁弁の国際規格は、電気・電子技術に関する国際標準化団体であるIEC(国際電気標準会議)で作られています。これは、調節弁が電気信号を受け取って作動する製品であること、電磁弁も交流電源(AC)または直流電源(DC)を動力とする製品であることが理由です。
ISOのバルブに関する専門委員会やIECの調節弁専門委員会には日本バルブ工業会からも委員を派遣し、国際規格の制定・改正・廃止を決める会議に参画しています。

自力式自動弁は種類いろいろ

自力式自動弁は私たちの身近なところにも存在しています。
ご家庭でトイレの水をジャーッと流すと、減った分の水がタンクの中に給水され、しばらく時間が経つと給水が止まります。これは、タンク内の水に浮かぶボールの位置が排水によって下がるのを合図にバルブが開いて給水を開始し、ある高さまでボールが浮かぶとバルブが閉まる=水が止まるようになっているからです。

水洗トイレのタンク

圧力鍋

もう一つ身近な例として、圧力鍋があります。圧力鍋は、密閉した鍋を加熱し、圧力を高めることで調理時間を短くすることができますが、鍋の中で圧力が高まり続けると、爆発してしまいます。そうならないよう、鍋蓋にある小さなピンから蒸気がシューシューと適度に逃げることで、私たちは圧力鍋を安全で便利な調理器具として使うことができるのです。
流体そのものの力で動くのが自力式自動弁だと述べましたが、トイレのタンクの場合は水の力、圧力鍋の場合は蒸気の力で自動的にバルブが動いている、ということになります。

呼び方が紛らわしい「調整弁」と「調節弁」

自力式自動弁のうち、液位や圧力、流量、温度を自動で制御するバルブを「調整弁」と呼んでいます。英語では「Regulating valve」または「Regulator」と言うため、用語として「Control valve」と混同することはないと思いますが、日本語にするとそれぞれ「調整弁」と「調節弁」になり、紛らわしくなります。「自力は調整」「他力は調節」と覚えておくとよいでしょう。

調整弁と調節弁の違い

調整弁(液位・圧力・温度・流量)

トイレのタンクで例を示したバルブが「液位調整弁」です(ボールタップと呼ばれることもあります)。タンクの排水・給水を制御するためのバルブで、ボイラ設備などで使われる工業用のサイズの大きいものもあります。
ボール(フロート、浮子ともいいます)についているレバーがバルブとつながっているので、その浮き沈みによって、バルブが開閉されるしくみになっています。

トイレのタンクの構造例

トイレのタンクの構造例

圧力調整弁は細かく分けるとたくさん種類がありますが、ここでは「減圧弁」について説明します。
減圧弁は、1次側から入ってきた流体の高い圧力を、所定の圧力にまで減らして2次側に流す役割を持つバルブで、建物の給水設備や、空調に使う蒸気の減圧に用いられています。
下の図の流路の形や弁体だけをみると普通の玉形弁のようですが、圧力を設定するためのねじや圧力を検知するダイヤフラムなどがあるのがわかります。これらの働きで圧力を自動で調整しています。
たとえば、高層マンションなどでは、ポンプで屋上の給水タンクまで持ち上げた水を再び下に流すことで各階に配水しています。このとき、下に向かって流れる水は勢いが良すぎる=圧力が高いため、減圧弁を通してあげる必要があります。

減圧弁の構造例

減圧弁の構造例

「温度調整弁」は「定温弁」と呼ばれることもあります。水や湯を貯めているタンクの内部温度を一定に保つため、そこに感熱筒という棒状のセンサーを挿入して温度を感知し、温度調整の必要が生じたときには自動でバルブが開いて水や湯がタンク内に送り込まれます。感熱筒は、筒内の媒体(気体や液体)が熱で膨張・収縮することで温度を感知するので、電気などの補助動力を必要としません。温度調節弁は、流体の温度の差によって作動する自力式自動弁です。

温度調整弁

「流量調整弁」は、配管を流れる流体の流量を一定に保つためのバルブです。バルブに入ってくる前の流体の圧力と、バルブから出た後の流体の圧力の差を検知し、絞り具合を調整することで流量を一定にします。圧力差を検知するのにはオリフィスというドーナツ状の円板(流量を調節し、前後の圧力差を測るために使われます)が使われ、①オリフィスと差圧調整弁を組み合わせて制御する方法、②圧力とバルブ内部のばねのバランスで制御する方法、③オリフィス形状のゴムが圧力でたわむことを利用して制御する方法のいずれかで、流量を一定にします。

流量調整弁01

流量調整弁02

スチームトラップ/エアトラップ

蒸気が通る配管の中では、凝縮された水蒸気が水に戻った液体「ドレン」が発生することがあります。蒸気は熱源として多く使われますが、配管内のドレンをそのままにしておくと、加熱ムラや加熱効率の低下が起こり、品質や生産性に悪影響を及ぼします。また、配管自体の腐食を招くこともあります。「スチームトラップ」はこうした問題を防ぐため、配管を流れる蒸気からドレンだけを自動的に排出してくれます。蒸気ではなく圧縮空気が通る配管で発生するドレンを排出するバルブは「エアトラップ」と呼ばれます。

スチームトラップ/エアトラップ

安全弁

工場などの配管・設備は、長短のパイプや継手、ポンプ、ボイラ、センサー・メーター類などに加え、ここまで紹介してきたさまざまな自動弁や手動弁で構成されています。工場を安全に操業するためには、それぞれの製品を正しく使い、メンテナンスも怠らないことが最低条件となりますが、万が一、何かの理由で配管・設備の圧力が異常に上昇した場合、爆発などの大事故を防ぐ最後の砦として作動するのが「安全弁」です。

安全弁はボイラなどの圧力容器や配管の要所に設置され、圧力が所定の値を超えた時に自動的に開いて、外に圧力を逃がします。現在主流となっている「ばね式安全弁」は、圧力の高まりとともにバネを押し上げることで弁体が開く構造のもので、圧力を逃がし終わった後には、また自動で弁体が閉じるようになっています(ばね式以外にも、おもり式、てこ式などさまざまな構造があります)。上に「最後の砦」と書きましたが、安全弁が作動するような事態を起こさないことが大切です。

安全弁

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